だんご虫ヒーロー。



「…こういう時に父親ぶって1人暮らしを反対するから、言ってやった。

『お金しかくれないあんたが今さら父親ぶらないで』って。
そしたらお父さんは黙ったまま。

唯一血の繋がった父親があたしにくれるのはお金だけ。
お父さんが黙ったことで、それが明確になった」



あたしって一体なんだったんだろうね?



紗奈は困ったように笑った。



前みたいに自ら死のうとする紗奈に戻ってしまうんじゃないかと思った。



でもその心配はなかった。



「…ったく、何であんたがそんな顔してるわけ?
もうあんたが思ってるみたいになんてならないから。

あんたが必死になって助けてくれた命、もう無駄にはしない」



私の鼻をつまんで、いつもの紗奈の笑顔にホッとした。



よかった。もう大丈夫だ。



紗奈は思いっきり背伸びをして、はぁと息を吐いた。



「…これであたしも1人暮らし出来るし、あんたへの報告は終わり!
次はあんたでしょ?」


「…へ?わ、私?」



まさかの次は私というのに驚いて、変な声が出てしまった。



紗奈はうんうんと頷きながら、私に近付いてきた。


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