だんご虫ヒーロー。
夕里の声が彼方と重なって聞こえた。
夕里が私に手紙を渡す。
彼方の字を見るだけで、心の奥に閉じ込めていた彼方との思い出が蘇る。
チビといじめられていた私を助けてくれた、彼方。
中学生の時に彼方に告白されて、付き合いたての頃。
花火大会の時に初めてキスをしたこと。
彼方が入院してる時に病院にお泊まりしたこと。
彼方の退院祝いに、一緒に観覧車に乗ったこと。
他にもあるたくさんの思い出が、箱から溢れるように脳裏に浮かぶ。
どれも初めてのことが多かったけれど、どれも最後だった。
彼方が亡くなってから、この思い出は心の奥にしまっていたのに。
もう彼方のことでは涙は流さないと決めていたのに。
ズルい、ズルいよ、彼方。
最後の最後で私を泣かせようとするなんて。