だんご虫ヒーロー。
「…それで結局、私だって言わなかったんだ?」
車を運転する夕里にコクリと頷く。
「…あれはもう昔のことだから。
学校の伝説としておいてくれればいいかなって」
私の言葉が面白かったのか、夕里はハハッと笑っている。
車が信号で止まると夕里は私のお腹に手を伸ばして、私のお腹を優しく撫でる。
「…具合はどう?悪くない?」
「うん、大丈夫だよ。思ってたよりも辛くない」
夕里に笑顔を見せると夕里は安心したのか、ふっと微笑んだ。
私のお腹の中には新しい命が宿っている。
妊娠5ヶ月。
お腹がちょっと膨らんできた。
私と夕里の子供。
夕里が「子供は俺がちゃんと出世してから」と言って、ずっと作らなかった。
でも今は自分で美容院を開いてしまうほどに出世した。
雑誌でもよく店が取り上げられるほど、夕里の実力はすごい。
そんな夕里にいつも髪を切ったりカラーをしてもらってる。
というか夕里以外の人にやらせてくれない、夕里が。