キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編
「……お口に合わなかったでしょうか」
おずおずと尋ねると、カチャン、と大きな音を立てて蓮さんがスプーンを置いた。
ああ、きっと美味しくなかったんだ……
私は泣きそうになり俯く。
「――――まあまあ、だな」
不意に聞こえた、呟くような声。
パッと顔を上げると、水の入ったグラスを片手に私を見つめる蓮さんの姿があった。
「まだ完璧とまではいかないが、一応食える味ではある」
相変わらず無愛想ではあるけれど、ほんの少しだけ表情が和らいでいる気がする……
「……素直じゃないな、蓮。僕はこれ、母が作ったものより美味しいと思うけど」
蘭さんもそう言って、グラタンを誉めてくれる。
「俺はお前と違って見え透いたお世辞は好きじゃねぇんだよ」
「お世辞?何を言うんだ、僕は本心で……」
二人はなにやら言い合いを始めてしまったけれど、グラタンを食べる手は止めない。
それを見ていたら嬉しさで胸が一杯になり、私は微笑みそうになる口元をお盆で隠した。
執事さんのスパルタ指導に耐えた甲斐があったよ……