キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編

「……お口に合わなかったでしょうか」


おずおずと尋ねると、カチャン、と大きな音を立てて蓮さんがスプーンを置いた。

ああ、きっと美味しくなかったんだ……

私は泣きそうになり俯く。



「――――まあまあ、だな」



不意に聞こえた、呟くような声。

パッと顔を上げると、水の入ったグラスを片手に私を見つめる蓮さんの姿があった。


「まだ完璧とまではいかないが、一応食える味ではある」


相変わらず無愛想ではあるけれど、ほんの少しだけ表情が和らいでいる気がする……


「……素直じゃないな、蓮。僕はこれ、母が作ったものより美味しいと思うけど」


蘭さんもそう言って、グラタンを誉めてくれる。


「俺はお前と違って見え透いたお世辞は好きじゃねぇんだよ」

「お世辞?何を言うんだ、僕は本心で……」


二人はなにやら言い合いを始めてしまったけれど、グラタンを食べる手は止めない。

それを見ていたら嬉しさで胸が一杯になり、私は微笑みそうになる口元をお盆で隠した。

執事さんのスパルタ指導に耐えた甲斐があったよ……

< 12 / 69 >

この作品をシェア

pagetop