キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編
テーブルに置いたままの裁縫箱をちらりと見やった蓮さんが言う。
「……針仕事でもしてたのか?」
「あ、はい!蓮さんのシャツでいくつか袖のボタンが取れかかっているのがあって……手はこんなですけど、ボタンの方はちゃんとつきましたか、ら――――」
言い終わる前に、私は蓮さんの逞しい腕に抱き締められていた。
私は目を見開いて固まり、思考も停止してしまう。
今朝の抱擁は寝ぼけていただけ、と説明がつくけど、今は蓮さんだってちゃんと意識があるはず。
それなら、どうして……
「……無理すんじゃねぇよ」
耳元で、怒ったような呆れたような声が囁かれた。
顔を上げると蓮さんは今まで見たことのない瞳……まるで蘭さんのような優しい色を浮かべた瞳に、私を映していた。
「カンナ」
「は、はい……」
「――――――サンキュ」
う、うそ……
蓮さんが私に、お礼を……?