キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編
4◆抑えが効かなくなるだろ
私のために蓮さんが用意したのは、ピンク色の可愛らしいドレス。
美容室で髪も巻いてもらい、会場であるホテルのエントランスのガラスに映った自分はお姫様みたいだった。
でも、浮かれてばかりもいられない。
今日は蓮さんの婚約者として相応しい行動を取らなきゃならないのだ。
そう思うと緊張して、会場に向かって歩く足のスピードが遅くなってしまう。
「――――カンナ」
「は、はいっ!」
少し先を歩いていた蓮さんが、眉間に皺を寄せてこちらを振り返っている。
きっと私の歩くのが遅いから怒ってるんだ。
慌てて一歩踏み出すと、履き慣れないパンプスでつまずき、私はそのままみっともない姿で転んでしまった。
「い、いたた……あっ!」
体を起こした瞬間、細いヒールがぼきりと音を立てて折れてしまった。
どうしよう……パーティー、もうすぐなのに……
途方に暮れる私を、他のパーティー参加者がクスクス笑いながら追い越していく。
なにがお姫様よ……
きっとみんな、私がそんな器じゃないと見抜いてるんだ……
こんなんじゃ、蓮さんにも迷惑をかけちゃう……
悔しくて情けなくて、折れたヒールを見つめる瞳にじわりと涙が滲んだ。