キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編
「カンナ……だよな?」
歩道の前方で誰かが、私を呼んだ。その声はどこかで聞いたことがあるような、懐かしい声だった。
「斗真(とうま)くん……?」
顔を上げると、そこに居たのは私の幼なじみ、木崎斗真(きざきとうま)くんだった。
だけど、彼はずいぶん前に海外に引っ越してしまって長い間会っていなかったから、少し顔立ちは変わっている。
大人びて、格好よくなってる。
「……誰だ?」
蓮さんが睨むように斗真くんを見るので、私は慌てて二人にお互いを紹介した。
「蓮さん、こちらは私の幼なじみの斗真くんです。斗真くん、こちらは私の婚約者の――――」
「四ノ宮蓮さん、ですよね?」
斗真くんは蓮さんを元から知っていたようにそう言って、にこっと微笑んだ。
どうして、知ってるの……?
蓮さんは怪訝そうに眉根を寄せ、私の手を握る力を少し強めた。
「昨日サンフランシスコから帰ってきたんだけど、カンナに会いにきみの家に行ったらいないから驚いたよ。それできみのお父さんから全部聞いた。
お父さんの会社のために、きみがしたくもない結婚をするってことを……」
穏やかだった斗真くんの表情が変わり、彼は蓮さんを冷たい目で見つめた。