キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編
しばらくすると右手の熱がふっと離れたので、私は心細くなって蓮さんを見上げた。
その横顔はさっきまでの強気な彼のものではなくなっていて、私の胸に嫌な予感が黒い雲のように立ち込める。
「蓮さん……?」
お願い、何か言って……
「……カンナ」
呼ばれた瞬間、ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。
私を見る蓮さんの瞳が……まるで感情をなくしたみたいに、濁っていたから。
「……俺を許せ」
「え……?」
「お前を信じることのできない俺を……許してくれ」
やだよ……蓮さん。
そんな言い方……やめてよ。
「考えもしなかった。お前の涙とか、笑顔とかが演技だなんて。……でも、よく考えたら俺みたいなひねくれた奴好きになる女なんて居るわけねぇんだ。居るのは、うちの財産目当ての計算高い女ばっかりで……」
「蓮、さん……」
私の気持ちを信じてくれないなんてひどい、と彼を罵ることができたらどんなにいいだろう。
蓮さんが他人を信じることに臆病になった原因を知っている私は、何も言えない。
ただ溢れる涙が、彼の姿を滲ませていく。
だけど……
それでも私は……