サクラ咲く
「じゃあ彼女から始めたら指輪受け取るのかよ。」



…いやまぁ、言葉のアヤというかなんというか…ごにょごにょ。



っていうか、この態勢。
なんか嫌、すごく嫌。


「離してください。
こーいうことは、彼女とかにしてあげてください。

…あたしは彼女じゃない。」


なんかもう解放してほしいんだけど。



願いは届かないものなのかもしれない。
かのこを包んでいた如月の腕に力が入る。
くるりと強制的に向きを変えられて焦る。


ち…近っ‼︎


見上げる勇気はないので胸元辺りを見るに留める。



「どう言えばかのこは俺のものになる?指輪やっても喜ばねぇ。キスしたって態度も変わらねぇ。俺ひとりがバカみたいじゃねぇか。」


……キスなんてもう9年前の話なのに。



どう言葉にすればいいかわからなかった。



ピー、ピー、ピー。




まるで試合終了のホイッスルのように、炊飯器が炊き上がりを伝える音をたてた。




それと同時に腕から解放される。




ホッとした筈なのに。



寂しいなんて…なんでなの。




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