サクラ咲く
お………。



男。



オトコ。



あの美女が。



「嘘でしょ…?」


「嘘じゃねぇ。この後に及んで嘘は言わねぇ。
如月 海里…ふたつ上の兄貴。
っていうか女になりたかった男。


オヤジに似た俺と違っておふくろに似たからな、顔が違うんだ。
疑うなら呼ぶけど。」

そう言いながら、立ち尽くすあたしの腕を引いた彼。



「かのこ…不安があるなら言えよ。
こんなことされたら寿命が縮まる。だいたいあんなやつと疑われたくねぇし!」


抱きしめられて涙が落ちた。




ホラ、ちゃんと聞けば答えが返ってくる。


彼は嘘をつかない。



あたしの…あたしだけの。



「ごめんなさい。」


首筋に腕を回して抱きつく。



背中に強く回された逞しい腕に力が入る。


そのまま、トサリ、と床に倒される。



「かの…あいつにヤキモチ焼くほど俺が好きか?」


見下ろしてくる薄茶色の瞳。



「す…き…、好き、好き!」



初めて言う【好き】。


気持ちが溢れて止まらない。



「やっと言ったな。かのこ。」



…美那が言う【欲しいと思う】瞬間なの?今、この時が。



「泰斗…」



名前を呼び、指で恐る恐るその頬に触れる。


重ねた唇から、愛が零れた。




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