サクラ咲く

結婚しよう。

「吉崎 美那といいます。」


ペコッと頭を下げた美那の肩を大輔が抱き寄せた。


「俺の彼女。22歳。もうすぐ23になる。
今は家事手伝いでアルバイトしてるよ。

嫁さんにしたいんだ、彼女を。」


そう言いきった大輔をバッと勢い良く見上げた美那は、知らなかった、といった表情をしていた。


「大ちゃん…」


「美那と知り合ったのは、彼女のバイト先。一生懸命に頑張ってる美那を見て、好きになったんだ。
もう4年前になる。
4年間付き合ってきて、こんなダメな俺をずっと笑顔で支えてくれたのが美那だった。

美那、いいよね?」



溢れ出す涙を止めることなんか誰にも出来ない。


大輔の母はハンカチを手に涙を流す美那に近寄る。

そっと背中に手を添えて、流れる涙をハンカチで拭う。


「ちゃんと美那さんと話をしてから来なさい、大輔。
こういう大事な話は仕事じゃないんだから、相手の気持ちをちゃんと確認しなくちゃ。」

さすがママ。


大輔がグッと言葉に詰まっている。


「まず、2人で話し合ってからでしょ、大輔。あなたはいつも大事なことが後回しよ。美那さんの気持ちを聞いてないのにそんな風に言ってしまったら、美那さんが断りたかったらどうするの?」



母の言葉に詰まる大輔の手を、美那が握る。



「大ちゃん、あたしでいいの?」


うるうるしている大きな瞳は、まっすぐに大輔を見つめる。



「美那じゃなきゃダメだ。」


「〜〜〜ッ」



わぁ、とひときわ大きな声で泣く美那。



貰い泣きしてしまいそう。


そう思い、隣に座る泰斗を見ると彼もまたかのこを見つめていた。



「俺たちも幸せになろうな、かのこ。」


耳元で囁く。


うん、と頷くしか出来ない瞬間となった。



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