侍先生!
「別にそんな事言って無いのに」


「言いそうな感じだったもん」


ふーん、と信じてなさそうな感じの言い方だった。


頑張ってやったのに。
酷い男だわ。


「森本がヒマだなんて信じられないけどな」


「なんでですか?」


「いや、女子にひっぱりダコにされてるんじゃないかと思ってさ」


それは無い!と大きく否定した。


カツオは意外に硬派なので、好きな子以外とはデートしないんだって、と言うと、先生はそうなんだ、と頷いた。


「先生こそ、ひっぱりダコだったんじゃないですかー?」


先生の手が止まった。


…あれ?
余計な事言っちゃった?


「俺は、仕事以外は暇だよ」


そっか、先生はずっと夏休みって訳じゃ無いもんね。
私はいけない事を聞いてしまったかな、と反省した。


「…真帆とは、会ったけど」


…聞きたかった言葉なのに、胸を打たれた感覚になるのは、どうしてなのかな?


私は胸の痛みを堪えるように、平常心を装って、言った。
< 103 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop