侍先生!
社会見学には、姫条と森本と吉川のみが参加。


相撲を見に行くという内容だ。俺と姫条ははしゃいでいたが、森本と吉川はそうでもなさそうだった。


相撲が終わったあと、ファミレスに行き、何故か知らんが、カラオケにまで行くはめに。


姫条は大河ドラマの歌とか歌いやがって。
俺も歌いたかったのに。


てゆうか、森本と異常に仲良さげに見えるのは、俺のきのせいか?


そう考えてると電話が鳴った。
俺は部屋を出て、通話ボタンを押す。


相手は、真帆だった。
…いったい、今さら何の用なんだ。


「はい?」


「もしもし、今大丈夫?」


俺がああ、というと、真帆は呟くように言った。


「指輪、返してないなって思って…」


「いいよ、そんなの。捨てて」


そう言うと、真帆は黙りこくってしまった。


「…分かった。もらいに行くよ」


待ち合わせ場所と日時を言って、電話を切った。


少し、忘れられそうな気がしたのに。
…いや、真帆が悪いんじゃないけど。


俺は部屋に戻ったが、その後の事は覚えていない。


そして、真帆との約束の日、真帆は指輪を黙って俺に渡して、何か言いたそうな顔をしたあと、すぐに帰っていった。


…なんなんだ、いったい。


聞けないのは、臆病になっているというのもあるけど、“言いたいけど言えない”という顔をしてたから。


俺はその日からまた、何かを忘れるように仕事に没頭した。
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