侍先生!
「信長の座は譲れないぞ」


「えー! 私も!」


「なにいってんだ! 俺が信長をやらなくて誰がやるんだ!」


「私ですー!」


ギャーギャーいっていると、なんだかいきなり思い出した。
デートの、お化け屋敷の事。私は顔を真っ赤にして、俯いた。


「み、光秀でもいいですよ」


照れ隠しにそう言うと、先生は大袈裟に喜んでいた。
人の気も知らないで。そして、大人げないよ、侍先生!


私はそう思いながら教室を出た。


「あ、まいちゃん」


声をかけてくれたのは、澪ちゃんだった。
前に、先生の事を相談したんだった。


「久しぶり。 ちょっと焼けた?」


「うん、でも赤くなってところどころ痛いんだー」


そんなたわいも無い話をしている途中に、澪ちゃんは小さくこう言った。


「どう、その後は? 先生と」


そう聞かれて、私は顔を真っ赤にした。


「何かあったんだ」


私はただ何も言わずに頷くと、澪ちゃんは、「また今度聞かせてね」と言った。


「まいちゃんのクラスは、文化祭なにするの?」


「…劇」


「へえ、どんな?」


「信長と、光秀の話」


「えーと、本能寺の変?だっけ? そんなのやるの?」


そ、そんなのって!一番盛り上がる部分じゃん!
私が必死にそう言い、うんちくを語ると、澪ちゃんは怪訝な顔をして、首を傾げていた。
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