侍先生!
『ガ―――――――!!』


「ぎゃ――――――!!」


姫条は大きな声をあげて、のけぞった。
俺ももビックリしてしまって、手を離してしまった。


ちょんまげのおばけが出てきて、それに驚いてしまったようだ。


「の、信長の…おばけ?」


「…みたいだな」


二人で笑って、おばけ屋敷を出た。


さっき、姫条を抱きしめてしまった事…姫条はどう思ってるんだろうか?


セクハラ?
キモイ?
ウザイ?


というか、俺はどんなつもりであんなことをしてしまったんだろう、と一人で葛藤していた。


姫条は、楽しかったと言ってくれたから、良かった…と胸を撫で下ろした。


姫条は、俺が抱きしめてしまった事をまったく聞かなかった。
…気づいてないのかもしれないな。



デートの日から数日が経って、学校は文化祭の準備にとりかかっていた。


うちのクラスは劇をやることになって、俺と姫条と信長ごっこを舞台化するんだって。


…まあいいけど。


「海! お前、劇出るんやって? 絶対大根やろ?」


いつもどおり、せいじ先輩がからかってきた。


「演技は自信ないっすけど、やりとげる自信はあります!」


「ほんまかあ、まあ頑張れよ!」


「せいじ先輩のクラスは何するんすか?」


「クレープ屋や。 ほんまはたこやき屋がよかったんやけどなー。 全員に本場のたこ焼きの味を教えようか考えてたんやけど」


「教師の意見なんて通らないもんですよ」


と、笑った。


「あとな、飲食系・展示・演劇の部門ごとに一位とったクラスの担任は、その日の夜の飲み会がただになるねんて」


「まじっすか! 頑張ります!」


「俺もがんばらななー!」


せいじ先輩と競わなくてよかったと、胸をなでおろした。
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