侍先生!
「キス、しちゃったんだって」


私のかわりに、皐月が言った。


いつのまに来たの?皐月。


「え? キス? まいちゃんと先生ってそんな仲だったの?」


「ちがうよっ! ああああああれは、事故で…」


「事故でも、キスはキスでしょ」


と、皐月。


そうなんだけど…。


「先生が、事故なんだからカウントには入らないって」


髪の毛を洗う手を止めて、そう言う。


「まいちゃん…」


美智子ちゃんが心配そうに声をかけてくる。


「相手が先生だったら、別に良かったんだけど…。 先生は、もしかしたら…嫌だったのかな」


ポタポタと、涙がこぼれる。


シャワーを頭からかぶって、泣いているのをごまかした。


「まい。 自分で思うのは自由だよ。 もうけた!って思っとけばいいんだって」


「うん…」


はじめはそう思った。
でも、先生の気持ちが気になって…。


「結局、全部逃げてるだけなんだな…」


ふたりにも聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。


水族館のあの時、告白のあとの先生の言葉に耳をふさいで、おばけ屋敷のあの時、抱きしめられた事の真相を聞けなくて、キスはなかった事にして。


私と先生の関係って、なんなんだろう?
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