侍先生!
「じゃあ、なんで先生は何もしなかったんだろう…」


和也くんは、うーん、と考え込んだ。
皐月も首をかしげていた。


「先生は、理性の塊なのか…?」


「それか、ゲイとか」


と、皐月。


「それは無いよ! だって先生、彼女いたもん!」


「じゃあ、他になんて説明つけるのよ!」


確かにそうだけど。
私は人通りの多い道を、ひたすら歩く。


「…そんなに気になるなら、本人に聞いてみたら? アテも無く考えるより、その方がいいかもよ。 本人もいい訳したがってるみたいだし」


と、皐月の目線に目をやる。
そこには、侍先生が走ってる姿があった。


「侍先生!?」


先生はハアハア言いながら、肩で息をする。


「お前…違う奴と行くなら、一言言ってからにしろよ…」


「だ、だって…」


先生が悪いんだもん、と顔を膨らます。


皐月と和也くんは「じゃあ、あとはお二人で」と言って去って行ってしまった。


「お前の怒ってる理由は何となく分かる。 でもな、その前に…」


「なに?」


「たこ焼き食おう」


と、先生は近くにあったたこ焼き屋を指さす。


…い、いいけど。
緊張感を無くして、肩から服がズれる。


ズれた服を直して、たこ焼きを買いに向かった。


「美味いな、ここのたこ焼き」


「…はい」


本当に美味しい。


私と先生はパクパクとたこ焼きを食べて、あっと言う間に全部たいらげてしまった。
< 187 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop