侍先生!
「そっか…、なら、いいんだけど」


「よ、よくないよ!」


え?よ、よくなって、何だよ?


「やっぱ何かしたのか、俺?」


「な、何もしないのが問題なの!」


「はあ?」


言ってる意味が分からなくて、首を傾げる。


…もしかして、何か期待してた?


「な、なんかあってほしかったのか?」


「それはそれで困るけど…」


「どっちだよ」


「だって、それって、先生が私の事を女として見てないって事でしょ?」


何を言い出すんだ、こいつは。


「だから、言っただろ。 キス同様、そうゆうのはちゃんと大事なやつと…」


そう言っても、姫条は納得しない様子だった。


「それに、俺とお前は教師と生徒なわけであってだな」


「今さらだよ、先生」


「…まあ、そりゃそうか」


確かに、今さら…だよな。


デートしたり、文化祭と修学旅行、一緒に行動して、事故とはいえ、キスまでして。


でも、俺が言いたいのはそういう事じゃなくて…。


「もういいよ! 部屋に戻る!」


言い訳を探してるうちに、姫条は部屋を出て行ってしまった。


…俺が姫条をどう思ってるかなんて、本当は分かってる。


でも、姫条にはまだ言えないんだ。
教師と生徒っていう以前に、俺のなかの問題が、まだ残ってる。
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