侍先生!
「でも、俺はまだ、真帆の事が頭から離れてないんだ。 こんな状態で、お前に気持ちを伝えたりは出来ないと思ってた。 でも、それはただ、真帆が何故、いきなり俺に別れを告げたのか、気になったから。 修学旅行が終わったら、真帆に会いに行こうと思う」


と言うと、姫条は表情を曇らせた。


「それって、よりを戻すって事?」


「…お前、人の話ちゃんと聞いてたか?」


「聞いてたよ!」


俺はため息をついた。


…こいつ全然わかってねーな、と。


「こんな中途半端な状態なままじゃ、お前と恋人同士になれないだろ? だから、ハッキリさせに行くんだよ」


「こここここっここ、恋人同士!?」


めちゃくちゃどもってるけど…大丈夫か?


「え? そうゆう事になんだろ?」


俺、なんか間違った事言ったかな?
姫条は大口を開けてあんぐりしている。


その顔が面白くて笑ってしまった。


「嫌なのかよ?」


「い、嫌じゃないけど! いいの!?」


「お互い好きなら、いいんじゃないの?」


言うと、姫条は頭を抱えたあと、少し納得したようで、俺に目線を戻した。


「私も、侍先生が好き」


「いい加減、その“侍先生”って呼ぶのやめてくれる?」


「えー」


ちょっとかっこいいけどさ。
と思ったけど、言わないでやった。


「問題が解決したら、下の名前で呼んでくれよ。 まい」


そう言うと姫条は顔を真っ赤にして、口をパクパクさせた。


「まいって! 先生、今…まいって!」


「何か言ったか? 姫条」


「わああああん! 戻ってるー!!」


もう一回呼んで!と言われたが、呼んでやらない。
ちゃんとした仲になったら、呼んでやるよ、と心の中で言った。
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