侍先生!
私がそう言うと、先生は驚いた様な顔をしたあと、黒板を見た。


黒板には、ハッキリと、“侍田”と書かれている。
先生は、慌てた様子で急いで黒板を消した。


「さむらいだ先生! 質問です!」


私は、大きく腕を上げて、席を立った。


「待って! 書きなおすから!」


書きなおす?
はて?なにを?


私は、腕をゆっくり下げて、黒板を見た。


また、チョークの登場。
また、カツ、カツと、色を残していく。


先生は、書き終わったのか、チョークの粉がついた手をポンポン、と軽く叩いて、こほん、とひとつ咳をして、みんなの方を向いた。


「…“倖田”海(こうだかい)です。 よろしくお願いします」


…え?さむらいだ先生じゃないの?
私は二回ほど瞬きをして、黒板と先生を見た。


“侍田”じゃなく、“倖田”と書きなおされている。
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