侍先生!
「…姫条」


呼び止められて、振り返る。


「さむらいだ先生!」


「…倖田だっつーの。 …って、ちょっといいか?」


「はい?」


私は先生の後に着いていって、着いたのが資料室。


中に入ると、誰もいない。


…先生と二人きりなんて、ドキドキするなぁ。



「昨日は、悪かったな。 プライベートだったらまだしも、彼女連れていって」


「ああ、いいですよー。 彼女さん、優しくて綺麗ですね! また、会わせてください」


「………」


先生は、何か言いたそうな顔をしてるけど、口を硬く閉じて開かない。


なんか、いつもの先生と、違う?


「先生?」


私が先生の顔を見ると、やっと、口を開いた。


「無理…だな。 もう会わせてやれない」


「へ? …気つかわなくていいですよ?」


「じゃ、なくて」


先生の瞳は、なんだか悲しそうで。
重そうな口を、動かしては閉じていた。
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