侍先生!
「さっき、なんで断っちゃったんですか?」


と姫条が言った。


お、珍しく敬語。
なんて関心していた。


「ああ、俺、彼女いるからね。」


…あ、言ってしまった。
まあいいか。姫条だし。


「え!?」


「そんな驚く事か?」


「え? いや、だって…」


ははーん。
コイツ、『え?こんなオッサンにも彼女いるのー?彼女シュミ悪―い』とか思ってんじゃないだろうな。


なんて、被害妄想か。
と、意味も無く天井を見上げて思った。


…ポタ、と。
本当に小さな水のしずくが落ちた様な音がした。


聞こえた、というより、感じた、のが近いかもしれない。


姫条の顔を見ると、涙を流していた。
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