BlacK DoG
「朱音さん、というんですか。素敵なお名前ですね」


「そんな、どこにでもある名前ですっ」


「いいえ、貴女の為に…貴女だけの為にご両親が考えて下さったとても素敵なお名前だと思いますよ」


うぅ、そんな素敵な笑顔で褒めないで…っ!
男の人にこんな風に言われるのなんて初めてなんだもんっ!



「朱音さん」


「はひっ!」



やだ、声裏返っちゃった!恥ずかしい!



「クス、緊張されてますか?すみません、女性のスタッフは此処に居ませんので私の対応で許して下さいませんか?」


「い、いえ、そんな!」



違う、違うのよ神父さん。
男の人が苦手とかじゃなくて、神父さんが格好良くて声も素敵で優しいから緊張しちゃうの!


ホント、格好良すぎるよ神父さん…。
同級生の男の子たちとは大違いだわ。

同級生……。



「あ、学校!」


「……お送りしますよ」


「そ、そんな、そこまでお世話を掛ける訳には…っ!」


「ついで、ですから」



結局お言葉に甘えてしまった。
助手席から神父さんを盗み見る。

やっぱり格好良いな。彼女とか居るのかな…居るよね、こんなに素敵な人放っておく人いないよ。
あれ、神父さんて結婚しちゃいけないんだっけ?
完全に望みないじゃん。


でも迷惑な話よね。
いきなり倒れた私を介抱してくれただけなのに、勝手に盛り上がって勝手に落ち込んで。
しかも学校まで送ってくれるなんて…優しすぎるよ。


窓の外に目を向けて気付く。
私の街…こんなだったっけ?

なんか、見慣れた街と違うような気がするんだけど…。

だめだ、眠い。


色々考えたいのに、すごく眠たい。


神父さんの運転が上手なのか、体調が悪いのか、音楽が心地良いのか…。



「…上がらない、か。仕方ありませんね」



上がらない?私のこと?
迷惑掛けちゃってるってことかな?



「ジェット、現場に向かいます。宜しくお願いしますね」



ジェット…?
なんの話だろう?

気になるけど…目が開かないや。
頭、働かな、い…。
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