BlacK DoG
「やっぱり、そうだったよ」
「そうですか。では思い出して頂きましょうか」
うぅ、一緒に居るのに話についていけない…。
一体なんの話をしてるのかな?
もしかして、漫画やドラマにあるような「実は私お嬢様で命を狙われてる」とか?!
そしてこのイケメンさんたちが守ってくれ…落ち着け私。
そんなことある筈ないんだから。
「朱音さん、此処を覚えていますか?」
「え…?」
目の前に広がる光景。
焦げ付く匂いと黒焦げになった家…のようなもの。
もう柱くらいしか残っていなくて、家だとは言えないような状態。
火事で全焼した家。
「あ…」
いつの間にか泣いていたみたい。
ユークさんに頬を拭われて気付く。
哀しそうな優しい笑顔。
ユークさんはこの場所を知っているんだろうか?
「いっぱい泣いて良いよ。俺が拭いてあげるから」
そう言われた途端、堰を切ったように涙が溢れた。
この場所を知ってるのは、私だ。
此処は、私の家。
なんで忘れてたんだろう。
あまりにもショック過ぎて一時的に記憶が飛んだとか、かな…。
怖かった。
朝練があるから早起きして、お父さんより早く出掛けた。
途中で忘れ物に気付いて家に戻ったら、家は真っ赤に燃えていた。
暑かった。
頭が真っ白になって、どうして良いか分からなくて…。
それから私…。
「家に、入った…?」