Toi et Moi
しばらくして、影月は僕の方を向いた。
「桂」
その後少し言葉を溜める。
「うん、寂しいよ」
それが月と話して出した結論。僕は有難うと言った。それから、でも僕は残れないと言った。言葉はどうしてか、少し掠れた。
「わかってるさ」
影月は鞄を掴むと立ち上がり、司書室を走って出て行った。影月の座っていた回転椅子がキイキイと鳴く。僕は呆然と、椅子を眺める。頭の隅の方で、グランドの向こうの野球部の声が聞こえていた。
どれくらいの時間が経ったんだろう。ぴたっと椅子の回転が止まった。それと同時にぼんやりとしていた焦点が合った。僕の足は動きだし、影月の足音が消えて行った方へ駆けた。