恋花火 ~恋は甘く切ない~


会うのも、話すのも久しぶりだね。


言いたいことや聞きたいことはたくさんあるはずなのに何も出てこなくて。


「ちょっと、話さねぇ?」



頷いてしまったら、あたしはどうなるんだろう。


このままもう会えなくなってしまうのかな。


そんなの、嫌だ。


丹後くんとこれからも一緒にいたいよ。


だから、ごめんね。


弱いあたしを許して……。


「……っごめん!今日これから用事があって、早く帰らなきゃいけないの」


……嘘つき。


今日は特に予定ないのに。


早く帰る必要なんてないのに。


だけど、今は丹後くんと話したくない。


だって、何を言われるか想像つくから。


だから、今はまだ……。


「そっか。わりぃな、いきなり」


そんなあたしに気づいていても、何も言わない丹後くん。


丹後くんはいつでもあたしの気持ちを察してくれる。


それがたまらなく嬉しくて、でもそんなの儚い夢でしかなくて。


「妃紗こそゴメンね。じゃあね、また明日」


そう言って、丹後くんの方を見ずに歩き出した。


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