恋花火 ~恋は甘く切ない~


マフラーはクローゼットの中に閉まっておいたんだよね。


だから丹後くんがどいてくれないと取りに行けないんだけど……。


「……無理」


そう言って丹後くんはあたしを抱きしめた。


離れるどころか、縮まる距離。



なに?なにが起こってるの……?


あたし……丹後くんに抱きしめられてるの?


「なにしてんの……。離してよ」


あたしのこと好きじゃないのに。


都ちゃんを選んだのに。


もうお別れしなきゃいけないのに。


「そうだよな……ごめん」


はっとしたようにあたしの体を離す丹後くん。


自分で言ったくせに……寂しいだなんて、そんなのおかしい。


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