恋花火 ~恋は甘く切ない~
「妃紗?」
いつまでもマフラーを持ったまま動かないあたしを不審に思った丹後くんがあたしに声を掛けてくるけど、耳に入ってこない。
これで丹後くんとの関係が終わるなら……このマフラーを返したく、ない。
明日からはあたしじゃない子に笑いかけて、
あたしじゃない子と隣で笑い合って、
あたしじゃない子に“好き”って言うの……?
その相手は……都ちゃんなんでしょ?
「そのマフラー、妃紗にやるよ」
そっと、丹後くんが呟いた。
でも、これを持っていたら……あたしは。
「いらないよ!こんなの持ってたら丹後くんのことずっと忘れられなくなる」
あたしの頬に涙が流れ落ちていく。
あたしは丹後くんに出会って何度泣いたんだろう。