恋花火 ~恋は甘く切ない~
きっと、数え切れないほどだろう。
でもね、同じくらいあたしは笑ってた。
丹後くんの隣でいつもあたし、笑ってたんだよ……。
「帰って……」
もうこれ以上一緒にいたくない。
一緒にいたら……離れられなくなる。
そんなのダメだから。わかってるから。
だから、お願い。
「帰らねぇよ」
なんで?
なんで、そんなにあたしの中に入ってこようとするの……?
そんな中途半端な愛なんていらないよ……。
「お願いだから帰って……。帰ってよ!」
あたしはさっきよりも大きな声で丹後くんに告げる。
ねぇ、わかってよ。
これはあたしの最後の強がりだってこと。
「じゃあ、帰るな……。またな、妃紗」
そう言うと、丹後くんはマフラーをあたしの手から取って部屋を出て行った。
またな、ってなに?
あたし達に“また”なんてあるの?
もう丹後くんには会えないのに……。