恋花火 ~恋は甘く切ない~


それはそうかもしれないけど……ついこの前まであたしと付き合ってたんだよ?


それなのにあたし以外の子と結婚なんて。


「妃紗、2人のこと素直に祝福できない」


気づいたらそんな言葉が口から出ていた。


でもそれは半分ほんとで半分ウソ。


好きな人が幸せならそれでいいって思う気持ちと、誰のものにもなってほしくないっていう気持ち。


「わかってる。全部俺のせいだから」


そう言った丹後くんの顔は少し悲しそうだった。


俺のせいって、あたし丹後くんに全部責任を押し付けたいわけじゃないのに。




「歩武くーん、そろそろ行かないと」


遠くから丹後くんを呼ぶ声。


顔を見なくてもわかる。


都ちゃんの声。


「都、俺ちゃんと妃紗と話したいから先帰っててくんね?」


話の途中だったし、丹後くんがそう言うのも当たり前のことだと思う。


でも、あたしはもう話すことなんてない。


2人は結婚する。


丹後くんは手の届かない存在になってしまうってこと。



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