恋花火 ~恋は甘く切ない~


「妃紗はもう話すことないから行っていいよ。元々、もう会うことはないって言われてたんだし」


それもそうだ。


あの手紙にだって書いてあった“会えない”の文字。


あのときは何でもう会えないの?って思ってた。


でも2人が結婚するなら……あたしと会う理由なんて、ないよね。


あたしは2人に背を向けて歩き出そうとした。



「待てよ」


だけど、そんなあたしの腕を丹後くんが掴んだ。


やめてよ。


もう付き合ってるわけでもないのに簡単に触れないで。


こんなときでさえ嬉しいなんて思っちゃうあたしは大バカ。


「丹後くんはさ、妃紗のこと何だと思ってるの?」


都ちゃんのことだって教えてくれなかったし、大事なことをあたしには何一つ話してくれない。


あたしは丹後くんのことをいつも想ってたし、何でも言い合いたいって思ってたよ。


でも、丹後くんは違ったんでしょ?


今だって、何で引き止めるの?


変に期待させないでよ……。


「妃紗はいつも丹後くんのことだけを考えてたよ。だけど丹後くんは違う。彼女になれても、丹後くんの1番にはなれなかった。丹後くんの中にはいつだって都ちゃんがいる。それなのに妃紗に期待させるようなことばっかして」



あぁ、ダメだ。


一度吐き出したら止まらない。


都ちゃんもいるのに。


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