レゾンデートル



気がつくと俺は泉士さんの細い腕をつかんでいた。
手の中に収まった腕は、なんだか頼りなかった。


「い、」


目を丸くさせた泉士さんは口をはくはくと動かす。


「痛たたた!!!力込めすぎ!!!」

「あ、すみません、」


叫ぶ泉士さんの腕をパッと離す。
涙目になった泉士さんは、腕をさすりながら顔を背けた。


「すみません、腕、痛かったですよね」

「そりゃ痛いわよ、力一杯つかみやがって…」

「すみません…」


俺が頭(こうべ)を垂れながら謝罪すると、長いまつげに塞き止められ目にたまった涙を拭いながら、泉士さんはこっちに顔の向きを戻した。


「もう良いよ。で、まだ何か用?」


泉士さんの言葉にポカンとした。
そういえば俺、なんで泉士さんを引き留めたんだっけ。



.



< 22 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop