レゾンデートル
気がつくと俺は泉士さんの細い腕をつかんでいた。
手の中に収まった腕は、なんだか頼りなかった。
「い、」
目を丸くさせた泉士さんは口をはくはくと動かす。
「痛たたた!!!力込めすぎ!!!」
「あ、すみません、」
叫ぶ泉士さんの腕をパッと離す。
涙目になった泉士さんは、腕をさすりながら顔を背けた。
「すみません、腕、痛かったですよね」
「そりゃ痛いわよ、力一杯つかみやがって…」
「すみません…」
俺が頭(こうべ)を垂れながら謝罪すると、長いまつげに塞き止められ目にたまった涙を拭いながら、泉士さんはこっちに顔の向きを戻した。
「もう良いよ。で、まだ何か用?」
泉士さんの言葉にポカンとした。
そういえば俺、なんで泉士さんを引き留めたんだっけ。
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