レゾンデートル



「え…と、」


どうしよう。完全に怪しまれてる。
泉士さんは物凄く怪訝そうな表情で俺を見ている。

何か、何か言わないと。


「バンド!」

「え?」

「バンドのメンバーって、もう決まってるんですか?!」


泉士さんはぽかんとしながら「いや、まだギターとキーボードしか目星がついてないけど、」と口を動かす。


「じゃあ、俺が他の楽器に立候補して良いですか!?」

「他の楽器って…何かできるの?」

「いえ、何も!」


ぎゅっと目を瞑りうつ向きながら叫ぶ。
我ながら突拍子もない発言だと思う。
口から出任せというか、勢いにのって言ってしまった。

バカなやつだと呆れられた?
バカにしたと腹を立てられた?

分からないけど、発してしまったものは仕方ない。

俺はそっと目を開けた。



.
< 23 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop