Sweet * 1LDK
ぼーっとしてると、玄関が開く音がした。
類、帰って来たのかな。
郁未くんは帰って来れないって言ってたもんね。
目を閉じたまま、そんなことを考えていたら、急に明かりがつき、眩しくて思わず起き上がった。
「うわっ、いるなら電気つけろよ。」
帰ってきたのはやっぱり、郁未くんじゃない、蜂蜜色。
「おかえり。」
あたしは素っ気なく言うと、またソファに寝っ転がった。
「ん。」
類はそういうと、風呂場へ行ってしまった。
その時。
携帯がなり出した。
画面の表示には 郁未くん と出ている。
あたしは勢い良く起き上がり、電話に出た。
「も、もしもし!」
『はは、なんでそんな焦ってるの。』
あぁ、やっぱりあたしはこの人が好きだ。
可笑しそうに笑う声が電話の向こうから聞こえる。
「べ、別に、どうしたの?」
『ん?用はないよ。ただ襟花の声聞きたくて。』
ずるいよ。
都合のいいときだけ帰ってきて。
あたしに期待をさせて。
そういうことを言う。
「…会いたい。」
『…うん。』
あたしはそこで、電話を切った。