Dear HERO[実話]
あの一件から数日後 ―――
この日はいつものように友達も交え数人で居酒屋に来ていた。
年上と飲むことに慣れていない私は、お酒を注ぎに行くことにも慣れていない。
タイミングも分からず樹に言われてから動いていた。
グラスが空きそうになったら注ぎに行く。
ほとんどお酒は飲めないから、私は自分が飲むより注ぎに行くほうが多かった。
ホステスみたいな扱いに不満を持ちながらも笑顔をふりまく。
そして少しずつ門限の時間が近付いてきた。
私は時間を気にしながら、隣でビールを飲む樹の洋服を軽く引っ張った。
ビールをテーブルに置く樹。
「どうした?」
「樹くん、私電車なくなっちゃうからそろそろ帰らないと…」
電車がなくなるのは本当だったが、早く帰りたい思いのほうが強かった。
慣れないお酒の席は私にとって息苦しかったから…