Dear HERO[実話]
「あぁ…じゃあそれで帰って……」
冷めた声でそう言ったのはカズだった。
暖かさの欠片も感じられないカズの言葉。
表情からしても冗談で言ったとは思えなかった。
悔しい…
私は何も言い返せなかった。
「凛、タクシーで帰っていいよ」
樹は最後まで心配してくれた。
「ううん、大丈夫!」
カズに対する反抗…
睨むようにカズを見ると、何食わぬ顔でお酒を飲んでいる。
「………」
バッグを持って席を立つと、さっきの女性が引き止めた。
「凛ちゃん、もう一杯ぐらいお酒飲んで帰ったら?」
笑顔でお酒の入ったグラスを差し出す。
「あ…いえ、もう無理です…」
赤い顔のまま苦笑いしながら答えた。
「もう一杯飲ませたら、家まで送らないと俺が心配ですよ!」
本気で心配する樹に、その女性は私のほうを見てニッコリ笑った。