Dear HERO[実話]
樹は友達との会話に夢中になりながらも、私のことを気遣ってくれた。
「大丈夫?酔ってない?」
真っ赤になった私の顔を覗き込んできた。
「うん、大丈夫。樹君は?」
「俺は全然平気!」
そう言うとまた一口ビールを飲んだ。
お酒を飲んで暑くなったのか、樹は上着を脱ぎ膝の上にかけた。
樹の上着が座っている私の左足にもかかる。
そして樹は周りから気付かれないように、上着の下からそっと私の手を握った。
………!?
突然のことに驚いた私はしばらく俯き、心臓をドキドキさせていた。
嬉しかった…樹の右手の暖かさが私を安心させてくれる。
でもきっと右利きの樹がいきなり左手だけを動かし始めるんだから、周りは二人の様子に気付いていたんだろうけど…。