Dear HERO[実話]
優しさ、強さ、人を惹きつける力。
そんな樹の存在が必要になっていた。
しかし、それを持っている人を私はもう一人知っている。
私自身がそれまで樹のことをその人に重ね合わせて見てきた。
でもそれももうないはず。
私が必要とする力を持っているのは樹になろうとしている。
やっとお互いを必要とし始めていた。
だがこの後に起こることを知らない私たち。
この時が一番幸せだったのだと後になって気付くことになるんだ…。
樹を見送った後、私はまた一人になった。
リビングの電気を一つだけ点け、ソファに座った。
しんっと静まり返った部屋。
樹に会えて寂しさを紛らわせることができたはずなのに樹が帰った今、その寂しさは一層強くなっていた。
でも実習も明日で最後。
実習が終わればまた前のように樹に会うことができる。
頑張らなきゃ…!!