Dear HERO[実話]
龍斗との電話から一ヵ月… ―――
樹に会ったこの日、いつものように家まで送ってもらった。
家の前に車を止める。
いつもキスして「またね」と言って車を降りた。
だけどこの日は違う。
私の異変に樹も気付いている。
だからいつもなら門限ギリギリに送る樹も、この日は門限より一時間も早く家の前に車を止めていた。
長い沈黙が続く…
できればこの場から逃げ出したい。
何もなかったかのように笑顔で「またね」と言って車を降りたい。
でも…
この日は自分の想いを樹に告げると決めてきたんだ。
心臓の鼓動を抑えられないまま口を開く。
「…話…が……あるの…」
頭の中が真っ白でうまく言葉が出てこない。
「うん…なに?」
何を話そうとしているのか、樹にはわかっていた。
それができれば避けたい話だということも…