Dear HERO[実話]
沈黙が続く…
それでも樹は私を急かそうとはしなかった。
私が口を開くまでじっと何も言わず待っていてくれた。
それは樹が私のことを理解してくれているから…
そんな樹の優しさに負けそうになりながらも、唇を噛み締め意を決して口を開いた。
「…私ね……他に…好きな人がいるの…」
声が震えていた。
樹の顔を見れない。
震える手を押さえながら声にするのが精一杯だった。
目には涙が溜まり、こぼれ落ちそうになるのを必死に堪えた。
「だから……」
「じゃあ、別れようか…」
その先の言葉を遮るように樹が口にした。
うつむきながら…。
「えっ…?」
思わず下に向けていた頭を上げ樹の顔を見る。