Dear HERO[実話]
樹の車が走り出す。
見えなくなるまで目で追い続けた。
そして…
車が左折し見えなくなった瞬間、私はその場に泣き崩れた。
溢れ出す涙を止められなかった…
「…うっ……ひっ……あ…あぁ…」
走り去る車の音が、永遠に聞けないものになってしまった。
嫌いになれて別れられたらどんなによかったか…
好きなのに別れなければならない。
でもそれは私自身が出した答え。
時間をかけて樹のことだけを見れるようになったのに、結局そっちは選ばなかった。
樹を傷付けることになっても龍斗への想いのほうを選んだ。
私がそれを望んだんだ。
嫌いになれたら…
そんなの私の自己満足でしかないね。
その日は樹と付き合い始めて、ちょうど8ヶ月の記念日だった。