Dear HERO[実話]
「触っていいよ…」
瞬きもせず見つめる私に龍斗は静かに言った。
その言葉に無言のまま、ゆっくりと手を近づけた。
そっと紫の竜に触れてみる。
今にも動き出しそうな竜に少し緊張しながら…
そんな私の様子を龍斗は黙って見つめていた。
「好きな色は?」
前に聞いたことがある。
そのとき龍斗はこう答えた。
「ムラサキ…」
「…紫?どうして?」
自分の予想とは違った答えに何か意味があるような気がした。
そして龍斗は微笑みながらこう言ったんだ。
「紫は神が決めた神聖な色だから…」
「………」
“神が決めた神聖な色”
龍斗の体に刻まれた紫龍の姿は、彼自身の強さを表しているように思えた。