Dear HERO[実話]
携帯の画面を何度も見ながら、龍斗からの連絡を待った。
「今日は出かける…」そう言って準備を終えてるのに、いつまで経っても家を出ない娘を母親は不思議に思っていた。
「まだ出かけないの?」
夕食を終えた母親は、部屋に入ってきた。
「まだ仕事が終わらないって…」
それから一時間経っても私は家に居た。
その間鳴らない携帯に何度も何度も目を向ける。
そして一時間半経ったとき、時計の針は9時半を指していた。
ガチャ…
母親が部屋に入ってくる。
「今日はもう出かけられないよ!」
溜め息混じりで言う母親。
顔から不機嫌なのが伝わってきた。
「…どうして?」
「こんな遅い時間に女の子が出かけるなんて駄目に決まってるでしょ!」
母親は眉間にしわを寄せる。
「でも約束してるんだもん!」
ベッドに座り、手に持つ携帯を見ながら納得のいかない顔をした。
だって…もうすぐこの携帯が鳴るんだよ。
「約束の時間も守れないなんて大した男じゃないんでしょ…」
「………」
母親の言葉に胸が煮えたぎる思いがした。