Dear HERO[実話]
「うん…彼女の手料理が食べたいんだ…」
あれ?そんなこと?
「前の彼女に作ってもらわなかったの?」
「そういうタイプじゃなかったから。二人で出かけたりすることもほとんどなかったし…」
寂しそうな顔をする奏汰。
「そっか…じゃあ今度作ろうか?」
「まじで?いいの?」
子どものように喜ぶ奏汰の顔に、思わず微笑んだ。
「うん、いいよ。でもあんまり料理しないから期待はしないでよ?」
「うん。作ってもらえるのが嬉しいから」
前の彼女とは本当に恋人らしいことをほとんどしなかったんだな…
それは私も同じだった。
ただ一緒に二人で買い物に行ったり、映画を観に行ったり、彼氏のために料理したり…。
そんな普通の恋人同士の時間がずっと羨ましかった。
お互い求めていたことは簡単なことなのに、今までそれを実現することが中々できなかった。
だからかもしれない。
私も奏汰も、周りの恋人同士が当たり前のようにしていることに一生懸命になっていた。
作ることではないのに、普通の恋人という形を二人で必死に作りあげていたんだ。