Dear HERO[実話]


ある晴れた日曜日 ―――

二人で遊園地に出かけることにした。


私は早起きしてお弁当を作る。


遊園地でデートするのは憧れだった。

自分が作ったお弁当を持って、好きな人とジェットコースターや観覧車に乗りたい。


ずっとそう思っていた。

好きな人と一緒に…


心の中はその部分がいつもどこかで引っかかっていた。




奏汰と園内を周り、ずっと憧れていたデートをする。


一緒にジェットコースターに乗ったり、観覧車に乗った。

お化け屋敷ではしゃいだ。

手を繋いで歩いた。



でも何か違う。

楽しいけれど、気持ちはずっと冷めていた。


お昼になるとベンチに座り、お弁当を広げる。


おにぎり・唐揚げ・卵焼き・エビチリ…
奏汰が食べたいと言ったので、コロッケも作った。



奏汰はどれも「美味しい」と言って食べてくれた。

正直、自信なんてない。

味が薄かったり見た目がよくなかったりしていた。


それでも「美味しい」と言って食べてくれる奏汰の優しさに、私は微笑み返すことしかできない。



そしてそんな奏汰の姿を見て、チクチクと心の一部分を痛めていた。

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