Dear HERO[実話]
奏汰が会社の同僚から勧められたという温泉へと車を走らせる。
一時間後 ―――
着いたところは自然に囲まれた風情ある小さな温泉宿。
食事、温泉付きで泊まらなくてもゆっくり休憩できる旅館風の建物だった。
しかし奏汰が予約していたのは家族風呂。
抵抗はあったけど、別々で入ろうにも次の予約が入っていたため仕方なく一緒に入ることにした。
そして奏汰は当たり前のように体を求めようとしたんだ。
「………」
熱い湯気で室内は白くなり、奏汰の強引なやり方に意識が朦朧とする。
暑さと男の力…
それに気持ち悪さが入り混じり、目眩さえする。
私はいつのまにかその場に座り込んでいた。
「…凛!?」
遠くで奏汰の声が聞こえる。
頭の中は真っ白…。
目の前も真っ白…。
ぼやけて何も見えない。
はぁ…はぁ…
「…きぶん…わ…るい…」
私の様子に奏汰もただ事ではないと感じたようで、抱き抱えて室内から出そうとしたけど、力が抜けて座り込んでいる私の体を抱き上げることができなかった。