Dear HERO[実話]
嘘の限界
友達に奏汰のことを聞かれるだけで苦しかった。
「楽しいよ」
「うまくいってるよ」
聞かれる度に嘘をつかなければいけない。
幸せなふりをしなければいけない。
何で嘘ついてまで付き合ってるんだろう…。
奏汰と付き合い始めて一ヶ月、私の心は限界だった。
自分の本当の想いを奏汰に告げるしかない。
これ以上自分の気持ちに嘘をつくことはできなかった。
「ごめん奏汰…。やっぱり私、奏汰とは無理だよ…好きな人のことが忘れられない。もう奏汰とは会えない…」
電話で奏汰に伝えた。
会って話せばきっとまた自分の気持ちが揺らぐに決まっている。
「マジで…でも俺の気持ちは変わらないよ。ずっと凛が好きだよ。会うのは来週で最後にしてもらえないかな?渡したいものもあるし…絶対に渡したいんだ」
奏汰に会うつもりはもうなかった。
「もう会わないほうがいいと思う…」
外は晴れていて、別れ話をする私の部屋には明るい光が差し込む。
その光が自分の想いを告げる決意をした私の背中を後押ししてくれたんだ。