Dear HERO[実話]
数分経っても顔を伏せている。
盛り上がる声が響く中、一向に動かない龍斗の顔。
テンションの高い貴久や歩美に笑顔を向けながらも横目で龍斗を気にする。
大丈夫かな…
そんな龍斗がやっぱり心配だった。
「……ウーロン茶……飲みますか?」
それが…初めて龍斗に面と向かって発した一言。
勇気をだしてウーロン茶を差し出した。
私の声に龍斗は伏せていた顔をゆっくりと上げ、ウーロン茶を見ると「ありがとう」と言って受け取った。
たったそれだけのことなのに胸はドキドキして止まらない。
龍斗のことが気になっているからか、怖そうな龍斗に話しかけたからか…その理由は私にも誰にも分からなかった。