Dear HERO[実話]
嫌なわけがない…
本当は嬉しかった。
龍斗の手は今もあのときと変わらずとても暖かかったから…
その温もりをずっと感じていたいと思った。
だけど…
龍斗にも私にも相手が居る。
壱春のことが頭をよぎる。
龍斗の奥さんと子どもが頭をよぎる。
「放したほうがいい?」
試すように聞く龍斗に、浅く何度も頷いた。
私の返事に不満そうにしながらも、龍斗は仕方なく手を放した。
その瞬間、私の震えは止まり全身に血が流れていく。
だけど、放された手は行き場を失ったかのように冷たく感じた。
本当は温もりを求めているのに…
「明日も仕事だろ?そろそろ出よっか…」
私は静かに頷き、二人で席を立った。