Dear HERO[実話]
あなたになりたい
3月の初め…
外の風は冷たかった。
私は龍斗の後ろを少し離れて歩く。
3年ぶりに見る龍斗の背中は、遠い存在に思えた。
手を伸ばしても届かない。
「何でそんな離れて歩いてるの?」
龍斗は私が近くに来ないことを不思議に思って振り向いた。
その目に引き寄せられるように足早に近付く。
だってこの数メートルがあなたと私の距離なんだよ。
私は隣に居てはいけないの。
その場所はなくなってしまったから…
そんなことを考えてるなんてきっと龍斗は思っていない。
私が停めている車のところまで歩いていく。
龍斗はいつも私が車に乗ったことを見届けてから、自分の車に向かっていた。
そんなとこでも守られていたんだと感じる。